海外M&A成功戦略の描き方

M&A

記事更新日:2021/01/13

海外M&A成功戦略の描き方

こんにちは。マルチブック編集部です。

以前はM&Aの基礎的な知識を紹介しました。

【5分でわかる】成長戦略としてのM&Aとは?|multibook(マルチブック)

 今回は海外M&Aについて説明していきたいと思います。昨今、海外M&AはM&Aのなかでも特に注目を浴びている事業領域です。なぜそんなにも注目を浴びているのか、そして海外M&Aを成功に導くにはどのような戦略を立てればいいのか、詳しく解説していきます!

海外M&Aの市場規模

 まず海外M&Aは国内M&Aに比べ件数は少ないものの、その金額は国内M&Aに比べて膨大です!
 以下の表を見てみましょう。一つ目は国内企業同士のM&AであるIN-IN型M&A、二つ目は日本の企業が海外の企業を買収するIN-OUT型M&A、三つ目は海外企業が日本企業を買収するOUT-IN型M&Aです。

画像2
画像3
画像4

(画像参照:M&A総合研究所

この表を見ると、件数に関してはIN-IN型が最も多いですが、成立金額を見ると、海外M&AであるIN-OUT、OUT-IN型M&A共に国内M&Aを大きく上回っていることがわかります。さらに、海外M&Aは金額、件数ともに成長しています

 国内経済が停滞し、市場が飽和する中、大企業はもちろんのこと中小企業も海外の市場を狙っています。そして、海外企業の買収は、企業に「市場」と「技術」をもたらし、海外進出のハードルを下げる。このような理由から昨今海外M&Aが増加し、注目をあつめているのです。

海外M&Aにおける日本企業の課題は大きく分けて三点あります。次に、これらの課題について説明していきます。

課題① グローバル経営力の不足

画像4

自社の経営理念・ビジョン・強み、M&Aの位置づけを明確に「伝える」力

日本企業の問題の一つが、自社戦略における被買収企業の位置付けを向こうの経営者と従業員に対して明確に伝えられていないことです。なぜなら日本企業は海外企業に比べ、自社の戦略を明文化せず、「その場の空気感」で業務を遂行しようとするからです。これでは被買収企業から不信感を抱かれる恐れがあります。特に海外企業では日本型の阿吽の呼吸ビジネスは通用しません!

 被買収企業に何らかの行動を求めるにあたってその要求の背景や理由を明確に説明することには、被買収企業が納得感と当事者意識をもって統合作業に関与できるといった利点があります。よって日本企業は明確にミッションビジョンを伝えることが重要になっていくでしょう。

 しかし、被買収企業とのコミュニケーションにおいて、日本企業は依然として言語面での大きな課題を抱えています。とりわけ、中堅規模の日本企業による買収案件では、英語が話せる人材が不足しているため、買収後のコミュニケーションを阻害されるケースが多くみられます。この問題の対策としては企業がグローバル人材の育成に予算を割くことが挙げられます。

・「異なる企業文化への適合力」を促すための配慮

 日本企業の文化は海外と比べて独特です。例えば、意思決定に時間がかかる、意見の対立、相違に非常に懐疑的、指示だしが曖昧、などがよく言われます。これらの文化は海外企業にとって困惑するものであり、グローバルガバナンスを今後推進していくためには、それらの文化を自覚し、浸透させる、あるいは見つめ直すことが必要です。

その方法には、
①M&Aの早期のフェーズからカルチャーアセスメントを行う
②自社文化浸透のための企画を行うこと
③自社組織を多様化する「ダイバーシティ経営」を促進すること

④そのような取り組みにかかるコスト、リソースを予算化すること。
があります。

課題② グローバル経営の制度・仕組みの未整備

画像5

・コーポレートガバナンスへの対応

日本企業はグローバル企業に比べると海外M&Aの評価・検討するにあたって、株主への説明責任に関する意識が依然希薄であるとみられています。欧米では企業は株主のものという考えが強く、長年コーポレートガバナンスに関する議論がなされてきました。一方で、日本のコーポレートガバナンスに関する体制はいまだ発展途上です。国際競争力の獲得のためには、日本企業はコーポレートガバナンスを重視していく必要性があると思います。

したがって、これらの解決策としてはコーポレートガバナンスの考えに基づき、株主に対する説明責任、結果責任を果たすことが重要です。

・インセンティブの仕組みを含むグローバルスタンダードの報酬制度

日本企業と海外企業で制度や仕組みが大きく乖離しているものの一つとして報酬制度があります。この違いが日本企業が海外M&Aで直面する課題となっています。日本の報酬制度は依然として年功序列制度が基本となっています。一方で、海外企業では変動報酬制度が基本です。また、日本企業の経営者の総報酬は他の先進国と比較して低位であることも問題になっています。これでは海外の優秀な経営者の獲得が困難であることがわかります。

これらの解決策はグローバル共通の報酬制度を確立することです。報酬基準は各国の雇用慣行が異なるため、実務的には当分の間、地域ごとに個別に運用せざるを得ないでしょう。しかし、今後起こりうる問題としては日本人経営者と外国人経営者の報酬額が著しく異なる場合、日本人経営者が不満を抱くなどがあります。そのため、中長期的にはグローバル共通の報酬制度を確立していく必要性があるでしょう。

課題③ M&Aプロセス全体を意識した「型」作りの不備

画像6

・M&Aの戦略、実行、PMIの各プロセスにおいて押さえるべきポイントの明確化

M&Aは日本企業がスピード感をもって成長を実現するための有効な手段ではありますが、一方で大規模な投資行為であることから、リスクを伴う事業判断でもあり、M&A戦略は明確に描く必要性があります。しかし、日本企業のM&Aは明確な戦略がないと指摘されることがあります。市場が拡大途中であるならまだしも、今後苛烈を極めるビジネス領域において戦略のなさは、企業の成長の大きな阻害要因となってしまいます。

よって、日本企業は旧態依然とした企業体制を改める段階にきています。今後はM&Aにおける戦略を社内外に対し明確に語ることが不可欠となっていくでしょう。

まとめ

いかかでしたでしょうか。今回は海外M&Aにおける日本企業の課題について

グローバル経営力の不足
②グローバル経営の制度・仕組みの未整備
③M&Aプロセス全体を意識した「型」作りの不備
をあげました。

参考文献:海外 M&A と日本企業~M&A の最前線に立つ国内外の企業の
声からひもとく課題克服の可能性~平成 30 年度我が国内外の投資促進体制整備等調査(日本企業等による海外企業買収の課題等に関する調査・研究等事業)報告書

クラウド型ERPソフトのmultibookでは英語、中国語など、11言語に対応しており言語面での課題解決をサポート致します。また、海外M&A後の海外拠点での「内部統制UP」や「リアルタイムでの経営数値の見える化」に向けた体制構築に対してお役に立てると思います。ご興味ありましたらぜひ、下記のリンクをご参照ください。

この記事を書いた人

マルチブック編集部

海外拠点管理にお困りの方は、
お気軽にご相談ください