シェアードサービスを活用した海外子会社の経理ガバナンス改善方法

経理アウトソーシング(BPO)

記事更新日:2023/10/23

シェアードサービスを活用した海外子会社の経理ガバナンス改善方法

目次

シェアードサービスとは


現在のビジネスの世界において急速に進化し、注目されている「シェアードサービス」というコンセプト。これは製造業から金融業やIT業など、幅広い産業で導入されている事業効率化の一環としての戦略的プラクティスです。シェアードサービスは、同様の業務を横断的に一元化し、高度な専門的能力を共有することでコストダウンや業務改善を図るという経営のあり方です。

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シェアードサービスの定義

シェアードサービスは、組織内で同じような業務が異なる部門で行われている場合に、それらを一元管理する体制を構築することです。シェアードサービスの導入により、全社的な業務効率化やコスト削減を図ることが可能になります。また、業務処理の標準化により、組織内全体での業務品質の均一化を追求することができるようになります。さらには、時間とリソースを節約し、企業の本業に集中できるようになるというメリットもあります。

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シェアードサービスのメリットとデメリット

シェアードサービスには、数多くのメリットがあります。業務の一元化により、組織全体でのコスト削減や効率化が可能となり、より専門的なスキルを持つ人材の確保や活用も容易になります。また、稼働時間を短縮できるため、企業の競争力強化にも寄与します。しかし、一方で、失敗すると大きなデメリットにもつながります。システムの導入に際し、大規模な初期投資が必要となり、そのリスクは軽視できません。また、部門間のコミュニケーションが薄れることで生じる問題も指摘されています。

シェアードサービスの成功事例

シェアードサービス導入の成功事例として、大手自動車メーカーがあります。彼らは、グローバルに展開している経理における一部サービスをシェアードサービスとして一元化しました。これにより、様々な業務プロセスの効率化を実現し、大幅なコスト削減に成功しました。また、業務のパフォーマンスも向上し、グループ会社のみならず一般企業にもサービスを提供し、蓄積したノウハウをもとにコンサルティング提供を行うなど、競争力をさらに強化できました。このような成功事例を参考に、自社の目指すシェアードサービスの形を模索し進めていくことが重要になります。

海外子会社の経理ガバナンス

海外子会社を保有する企業では、子会社の経理ガバナンスが大きな課題となっています。資金の使途や会計基準、予算の実行といった重要な経理上の事項が主親会社と子会社で異なると、情報の非対称性が生まれ、経営の透明性が損なわれます。これらの問題を克服するためには、経理ガバナンスの強化が必要となります。

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経理ガバナンスの意義

経理ガバナンスとは、企業の継続的成長を支えるために、財務報告の信頼性を確保し、内部統制を適切に機能させる仕組みのことです。具体的には、財務諸表の精度を保証し、不正行為を防ぐためのルールや規定を設け、それらを遵守するためのシステムを整備します。企業のステークホルダーは、経理ガバナンスを通じて企業の財務状況やリスク管理の体制を理解します。これにより、株主や取引先、金融機関などは企業の信頼性を評価します。また、経理ガバナンスが強化されることにより、中長期的な事業計画の立案が可能となります。ゆえに、経理ガバナンスは、企業の持続的成長を促進する重要な要素であるのです。

海外子会社における経理ガバナンスの重要性

海外子会社における経理ガバナンスの強化はますます重要となっています。異なる税制や会計基準、通貨単位の違いなどにより、子会社が適切な経理処理を行っているかを確認するのは困難です。しかし、経理ガバナンスが不十分だと、子会社の不適切な財務報告や経理処理の問題が親会社の業績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、子会社が自主的に責任と権限を持つ経理ガバナンスの体制を確立し、親会社がそれを監督することが求められます。このような体制は、企業全体の経理品質を高めるだけでなく、親会社と子会社間の信頼関係を築き、リスク管理を強化する効果もあります

経理ガバナンスの改善法

経理ガバナンスを改善するには、まず経理組織のリーダーシップが重要です。リーダーは、組織全体で経理ガバナンスを理解し、遵守するための方針を明確に設定することが求められます。また、適切な経理ガバナンスを維持するためには、定期的な内部監査が必要です。監査の結果をもとに経理プロセスの改善を図ることによって、経理ガバナンスの品質を向上させることができます。さらに、海外子会社における経理ガバナンスの改善には、親会社の積極的な支援と指導が重要です。具体的には、規範や手続きの統一化、教育プログラムの導入、情報システムの強化などを通じて、子会社が自己管理の経理体制を確立するための支援を行うべきでしょう。これらの改善法を通じて、経理ガバナンスを強化し、企業全体の経理品質を高めていきましょう。

シェアードサービスを活用した海外子会社の経理改善方法

海外子会社の経理業務は、言語の違いや法制度の理解、さらには時差等の問題を抱えることが多く、省力化や効率化の必要性が高まっています。一般的には経理等のバックオフィスは本社からのリソース協力が後回しになりがちです。その対策としてシェアードサービスを活用することで、これらの問題を解決し、業務のクオリティを向上させることが可能です。

海外子会社でのシェアードサービス導入のメリット

海外子会社においてシェアードサービスを導入することは、多くのメリットがあります。言語の壁を越えた情報共有や業務処理の一元化により、業務の透明性と効率性が向上します。また、経理分野以外の業務も一元化することで、より専門性を持つことが可能になります。更に、リスク管理も強化され、コンプライアンス対策やガバナンス機能が強まり、企業全体の業績向上に寄与することが期待できます。言語の問題も、シェアードサービス内で一元化された言語によるコミュニケーションが行われるため、解消されます。時間差の問題も、シフト制による業務体制の構築が可能となります。

シェアードサービスが狙うべきものはシンプル

シェアードサービスのメリットについて述べてきましたが、基本的に行うことはシンプルです。先ずノウハウの蓄積を行うこと。平準化、標準化をすすめること。そして集中による生産性と品質の向上を図り、専門性を深化させることにあります。これらを段階的かつ網羅的に目標設定に取り入れることで委託側に取っては相談頻度が上がりアウトプットまでの業務時間が向上します。量から質へのさらなる転換こそが業務をシェアードで行う意義となります。

経理ガバナンスとシェアードサービスの関連性

経理ガバナンスの目的は、組織の経理機能を統制し、透明性、説明責任、公正な経済的価値創造を図ることです。海外子会社において、シェアードサービスを活用することで、経理ガバナンスを強化することが可能になります。具体的には、シェアードサービスの導入により、経理業務のセンタライズ化、標準化を進めることで、業務の透明性が向上します。また、経理のエキスパートによる適切な判断が可能となり、説明責任も増大します。さらに、シェアードサービスの導入により、独立した経理組織の形成が可能となり、公正な経済的価値創造の実現に寄与します。

シェアードサービス導入時の注意点

シェアードサービスを導入する際には、複数の注意点があります。まずは組織文化の適合性、業務の一元化により、組織内の独特な文化や仕組みに影響を及ぼす可能性があるため、全体の理解と協調性が求められます。また、初期投資額が大きくなることも多く、既存のビジネスに影響を及ぼさないように、企業全体の意志決定と合意形成が重要となります。ただし、これらどの企業においても最初に経験する壁を乗り越えれば、シェアードサービスは企業の業績と成長に大きく貢献します。

海外子会社と本社のコミュニケーション強化法

企業において、海外子会社と本社が円滑なコミュニケーションを持続させることは至って重要です。時差や言語、文化の違いから生じるミスコミュニケーションを解消し、ビジネスをスムーズに進めるための方法論を探求していきます。

コミュニケーションの重要性

グローバルな展開を果たしている企業の中では、本社と海外子会社との間で情報が適切に共有されず、経済的な損失が発生するケースが多々あります。これらは、言語や文化の違いから生じるコミュニケーションの断絶が原因です。時間と労力を投じてでも、コミュニケーションを強化することは、エラーの早期発見や意思決定の精度を上げるために重要となります。また、相互理解を深め感じ合うことで、両者間の信頼関係を築く素地ともなります。

具体的なコミュニケーション強化手法

第一に考えるべき手法は、コミュニケーションツールの適切な使用です。オンラインミーティングツールやチャットアプリ、文化・言語の違いを考慮した翻訳ツール等のITを活用することで、リアルタイムでのコミュニケーションを実現します。さらに、定期的な研修を通じてコミュニケーション技術の向上を図り、相互の理解を深めることも有効な手法です。また、両者がお互いの文化を理解するために交換留学などの人材交流を行うことも推奨します。

コミュニケーション強化による経理ガバナンスの改善

コミュニケーションの強化は、経理ガバナンスの改善にもつながります。明確な情報共有が行えるようになれば、企業の財務状況やリスクへの理解が深まり、不適切な会計処理を防ぎ、透明性と公正性が増します。加えて、本社と子会社間で必要な情報が共有され、迅速な意思決定が可能となるでしょう。これにより、企業全体としての経営の効率性が向上することが期待できます。

具体的な海外子会社のシェアードサービス活用法

シェアードサービスは、企業の効率化、一体化、品質向上といった目的を達成する手段の一つとして注目されています。特に、海外の子会社においては、本社との一体運用や業務の効率化、情報共有などの面で大きなメリットを享受できるのです。

シェアードサービスの具体的な活用法

シェアードサービスの最も一般的な活用法は、部門間で重複して行われている業務を一元化し、効率化することです。例えば、人事部門や会計部門などのバックオフィス業務は、全ての部門で必要ですが、同じ作業を各部門が別々に行うとなると、時間や人的リソースの無駄が生じてしまいます。そこで、これらの業務をシェアードサービスセンターと呼ばれる一つの部門に集約することで、効率化を図るのです。

また、海外子会社では、本社と違う環境や法律などに対応しながら業務を行う必要がありますが、シェアードサービスを活用することで、その手間を減らすことが可能です。例えば、グローバルに展開する企業では、税制や労働法の違う各国の子会社が独自に人事や経理業務を行うためスタッフやマネジメントには大きなコストが発生します。それを、地元スタッフと連携しつつ共通化することで、大幅なコスト削減を図った事例があります。

事例から見るシェアードサービスの活用

便利なシェアードサービスですが、その活用は企業により多様です。一つの事例として、大手外資系企業がグローバルな規模でシェアードサービスを運用した実話があります。まず、人事部門や会計部門などのバックオフィス業務を一つのセンターに集約しました。世界各地のオフィスからの業務依頼を一元管理し、センター内で自動分配する仕組みを作り上げ、業務の迅速化と効率化を実現しました。

また、同社では地元スタッフと連携し、各国の税制や法律に対応した業務運用を行いました。これにより、各地域の子会社が独立して業務に取り組むよりも大幅なコスト削減が実現できました。また、シェアードサービスセンターを活用することで、各支店における人的リソースの確保や育成にも取り組め、組織全体の業績向上に貢献したと言われています。

このように複数の拠点を持つ企業であれば、新たな拠点設立においても本社のガイドラインに基づくシェアードサービスを構築してしまえば、新規展開におけるバックオフィスの構築は容易となる事例です。

失敗事例とその教訓

シェアードサービスの導入は、企業の業績向上につながる一方で、うまく進まないケースも存在します。一つの失敗事例として、導入前の十分な準備不足が挙げられます。具体的には、業務の内容を詳細に把握せず、また一元化することが必ずしも効率化につながるとは限らないという業務との切り分け業務を欠落させてしまった例があります。

この失敗事例から学べる教訓は、シェアードサービスを活用する前に十分な検討と準備が必要だという点です。どの業務を一元化するか、そのためのシステムや人員は十分か、組織全体がシェアードサービス導入を理解し、賛同しているかを確認すること、特に海外においてはトップダウンによるリーダーシップが求められます。明確な経営方針の下導入プロジェクトを進めることがシェアードサービス成功のカギとなります。以上が、シェアードサービスの活用法とその教訓の具体的な例です。

シェアードサービス導入後の評価法

シェアードサービスの導入後、その効果をきちんと評価し、パフォーマンスを向上させていく重要性は言うまでもありません。つまり委託側と受託側が一体となって”カイゼン”を続ける評価方法が確立されていなければ、導入の意義は半減してしまうことでしょう。

シェアードサービスの効果測定方法

シェアードサービスの効果を測定するためには、まず導入前と導入後の結果を客観的に比較することが必要です。その一環として費用対効果の分析、業績指標(KPI)の解析を行い、パフォーマンスの変化を定量的に捉えることが求められます。例えば決算の早期化を現実的な日数から短縮すること。あるいは分析や定常的レポートの作成までをいれてしまってもよいでしょう。

2つ目は、ステークホルダーに対するアンケート調査を実施し、サービスの認知度や満足度を明らかにすることです。システム操作性、使いやすさ、問題解決能力など、ユーザー視点からの評価を取り入れることで、より具体的な改善点を見つけ出すことが可能となります。

導入後のフォローアップ

導入後のフォローアップは、効果測定と同様に極めて重要です。このプロセスでは導入後の問題点を特定し、それに対する改善策を策定します。具体的には、一定期間ごとにレビューミーティングを開催し、各部署の意見を集約することから始めます。その上で、具体的な問題点と解決策をリストアップし、優先順位をつけて実施していきます。

改善点の特定とその対策

効果測定とフォローアップの結果、明らかになった改善点については迅速に対策を講じることが求められます。対策はその問題の性質によって異なりますが、一般的には業務プロセスの見直し、新たなシステムの導入、スタッフの再教育などが考えられます。ただし、対策の効果を最大化するには、常にユーザーニーズを考慮に入れ、その変化に柔軟に対応していく必要があります。

今後のシェアードサービスの展望

我が国でも近年、急速に普及が進んでいるシェアードサービス。その中で今後の展望はどうなるのでしょうか?身近な例から見てみますと、自動車という資産を持つ必要が無くなる時代が到来しつつあります。カーシェアリングの普及が進むことで資源の効率的な利用が可能となり、環境負荷も大きく抑えられるでしょう。

シェアードサービスの未来予測

シェアードサービスの大きな特徴は誰もが手軽に利用できる点です。近年では、働き方改革が進んでおり、自宅でのリモートワークが主流となっています。この流れが進むことで、自宅近くの共有スペースを利用するなどのシェアードサービスが一層重要性を増すと予測されます。

また、自動車の共有に留まらず、バイクや自転車といった移動手段もその対象になると考えられます。個々のライフスタイルに合わせた利用が可能となり、都心部の混雑緩和や地方での移動手段の確保にも貢献するものと思われます。

海外子会社でのシェアードサービスの可能性

海外子会社でもシェアードサービスは大きな可能性があると言えます。まず、グローバル企業の一員としての働きやすさを実現するためにオフィス空間の共有化が進むでしょう。また、社員間のコミュニケーションを円滑化するために、カフェや飲食店、休憩スペース等の設備提供も一部では始まっています。欧米各国の24時間稼働のBPOセンターとして有名なフィリピンなどでも社員の獲得競争からこうした設備投資がかなり進んでいます。

持続可能なシェアードサービス運用のために

シェアードサービスが持続可能であるために必要なことは、各サービスが利用者から信頼され続けることです。そのためには、シェアードサービスの提供者が、常に高品質のサービスを提供し続けることが求められます。信頼されるシェアードサービスを運営するためには、利用者の声に耳を傾け、時には柔軟な対応も必要となるでしょう。

結論:海外子会社におけるシェアードサービスと経理ガバナンス

海外子会社における経理の問題を解決する手段は多種多様であり、その中でも特に重要な役割を果たすのがシェアードサービスと経理ガバナンスです。これらの要素は取引の正確性、財務報告の透明性、コスト削減など、企業経営に不可欠な要素であり、その実装によって組織の成長と進化を実現させます。

海外子会社の経理ガバナンス改善の必要性

近年、企業の海外進出が増加する中で、特に海外子会社の経理ガバナンスが重要性を増しています。これは企業の取引がグローバル化するにつれて、経理処理の効率性や正確性、コストの削減等が求められるからです。海外子会社における経理業務は、言語や文化の違いに加えて、税制度や会計基準の違いも含んでいます。これらは企業にとって大きな問題であり、それを解消するために経理ガバナンスの強化が求められています。

シェアードサービスの有効性とその活用法

シェアードサービスとは、同じ業務を行う部門間でリソースを共有し、効率化とコスト削減を図る手法です。従って、海外子会社の経理ガバナンスを改善するためには、このシェアードサービスの活用が極めて有効であると言えます。

例えば、海外子会社間での標準会計処理を共有することで、業務の効率化や処理の統一性を実現します。また、シェアードサービスを活用することで経理のプロフェッショナルを集め、知識の共有やスキルの向上も図ることが可能です。さらに、情報システムを活用することでデータの一元化を実現し、大幅なコスト削減を達成することも可能です。

経理ガバナンスの未来とシェアードサービスの役割

経理ガバナンスの未来は、劇的な変化が予測されています。それに伴い、シェアードサービスもこれらの変化を有効に活用し、価値を創出するための新たな役割を果たすことが期待されています。

これには、AIやRPAなどのテクノロジーを活用した業務自動化を含んでいます。これらのテクノロジーを取り入れることで、人間が行う繰り返しの作業を自動化し、経理の原価を大幅に削減することが可能なのです。新しいシェアードサービスの役割としては、これらの新たなテクノロジーの普及と適用を推進することで、デジタルBPOや、グローバル・ビジネス・サービス(GBS)へと進化していきます。急速に進化する情報システムとグローバル化に経理のガバナンスは応じてゆくことが求められます。

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この記事を書いた人

渡部 学

日系半導体商社にて経理、IT、シェアードサービス、海外業務統括、総務の責任者を経て、香港現地のM&Aに伴う買収先のPMIに従事。その後アジアパシフィック全域の財務統括を担う。帰国後は外資系医療機器製造業の日本法人におけるCFOとしてグローバル企業のリーダー職に従事。2019年株式会社マルチブックにCFOとして参画しM&Aによる資金調達をリード。2021年CEO就任。

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