「IPOに向けた経営体制変革の土台作りに欠かせない」世界シェア上位の製造業企業がマネジメントコックピットを採用した理由
マシンビジョンレンズとよばれる産業用の光学レンズの製造・販売を行っている株式会社ヴイ・エス・テクノロジー。東南アジア・ヨーロッパ・北中米と幅広いエリアに海外拠点を展開し、マシンビジョンレンズの本数で世界シェアは10%強を占め、世界トップクラスです。
オーナー経営から継続的な事業成長を遂げるため、上場を決意したタイミングでマルチブックの見える化プラン・マネジメントコックピット導入をご依頼いただきました。今回は同社で導入の意思決定をした依田様と加藤様に、マルチブックの率直なご感想や導入経緯などについてうかがいました。
本記事のサマリー
・multibook導入の背景:
2025年末のIPOを目指す株式会社ヴイ・エス・テクノロジー。
これまではスピーディーな事業展開を優先し、部分最適で経営を行ってきた同社。IPO準備を機に、各海外拠点で異なる会計システムを利用していることや、現地との言葉の壁、拠点によっては会計専任の担当者がいないケースもあり、ひいてはそれらが決算早期化や内部統制強化を阻害しているため、その状況の改善に着手。
IPOが求めるクリアでスピーディーな経営体制の土台を作るべく、multibookの見える化プラン・マネジメントコックピット導入を決意。
スピーディーな事業展開を優先した部分最適からの脱却
――貴社の事業内容や海外展開について教えてください。
依田:当社は「マシンビジョンレンズ」とよばれる産業用の光学レンズの製造・販売を行っています。半導体や電子部品の生産装置などに組み込まれている、お客さまの目となるような製品ですね。レンズの製造を軸として、照明や検査装置等の光学・画像処理のソリューションをはじめ、1,000種類以上の製品を世界中で展開しています。マシンビジョンレンズの業界では、出荷本数を基準として世界シェア10%強と業界トップのシェアを誇っています。
1997年の創業時から25年かけて世界の市場を開拓してきました。支社はアジア、北中米、欧州など23の拠点を展開しています。連結売上高は80億(2022年計画)を見込んでおり、2024年には連結売上高を100億超にすることを目指しています。
――multibook採用前に、貴社が抱えていた課題について教えてください
依田:今までは創業者が自ら事業を牽引していく、いわゆるオーナー経営のスタイルでした。しかし、創業から20年を迎え事業承継の必要性を感じた創業者は、今後100年以上続く企業を目指したいという思いから、2025年末を目処にIPOするという目標を設定したのです。
それに伴い、社内でも急ピッチで組織再編がなされ、1年前からようやく経理財務部というIPOに向けた土台作りをする部署が立ち上がりました。というのも、今まではスピーディーな事業展開が最優先だったため、社内での部分最適が進みすぎてしまい、ガバナンスが弱い状態だったんです。また、当初は経理や財務といった管理部門も社長室に付属している秘書室のような状態で臨機応変に様々な業務をこなしていました。また、一部の業務は外部のパートナーにお願いしており、例えば会計業務は基本的には会計事務所さんにアウトソースし、その結果を弊社側で確認するという典型的な中小企業の業務体系になっていました。
会計部門のアウトソーシングに関しては海外拠点も同様な状況です。拠点によっては会計知識やスキルを持った担当者がいないケースもあり、会計事務所さんにほぼお任せ状態になっており、経理財務の体制が整っていない場合も多々あります。
こうして2025年末目標でIPOに向けて動き出したわけですが、連結会計の強化やグループ全体のガバナンス強化を進める中で、海外拠点の情報をリアルタイムで収集・集約・分析をして経営陣へ報告できる体制を作らなくてはいけないという課題に直面し、解決策の情報収集を始めました。
また、内部統制面でも課題がありました。オーナー経営という性質上、これまではある程度のポジションのものが社長に1本電話をすれば社長の独断でその後の方針が決まってしまうようなことが多々ありました。ただ、上場するとなると、規定を整備した上でその承認フローに沿って稟議を進めていく必要があります。IPOに向けてはそうした業務フローの構築をはじめとする仕組みづくりが求められますので、今まで認識してはいたものの、実現に至っていなかった部分にも手を入れていく必要があると実感しているところです。
――multibook導入以前、海外拠点は地域や国でバラバラのシステムをお使いのようでしたが、それによってどのような問題があるのでしょうか?また、そのような状況で海外拠点の業績把握はどのような方法で実施されていたのでしょうか?
依田:お恥ずかしい話ではありますが、各海外拠点とのコミュニケーションにまだまだ課題があります。お互いコミュニケーションを取るのに十分な英語力がないこともさることながら、現地に会計を理解している専任の担当者がいないことで、正しい数値をしっかりと集約できているかの確認に時間がかかっていました。
加藤:実際の業務の流れとしては、毎月各拠点のシステムで作成した財務諸表(試算表)を収集し本社でExcelを使ってその情報を集約します。さらに四半期毎にExcelベースの連結パッケージを使用してグループ全体のフル連結を実施しています。各拠点で異なるシステムを使用しているため、例えば勘定科目の紐付けなどはデータ集約後にExcelを使って手作業で実施していますが、作業が煩雑になり精度やスピードに課題があると感じています。
また、各拠点から提出してもらった財務諸表で数字がおかしい部分があっても、各拠点のシステムやその入力方法を日本本社で理解していないため、内容の把握や適切な指示ができず修正までに時間がかかってしまうケースも多々ありました。こうしたコミュニケーションを取ることは、各拠点との時差の影響もあり、かなり時間がかかっていました。ひとつの数値について質問をして回答をもらうだけでも、半日〜1日ぐらい時間が空くこともありました。
依田:そのような課題があり、海外拠点も含めたグループ全体の数値の集約に活用できそうなmultibookのマネジメントコックピットの導入を検討しはじめました。
IPOが求める経営体制の土台づくりーーグローバル全体の見える化と「数値を語る」風土
――IPO実現において経営管理業務観点、経理業務観点では何を重視されていたのでしょうか。
依田:まず経営・ガバナンスの観点では海外全拠点の状況を数値でリアルタイムに把握できるようにすることです。加えて、その数字をチェック、承認するルールや仕組みの整備も必要になると考えています。また、経理業務観点ではグループ全体での会計基準の統一、各個社の決算業務及び連結決算業務の精度向上とスピードアップを重視しています。
今回のmultibook見える化プランの導入によって、スピーディーな現状把握とそれらの情報に基づいた円滑なコミュニケーションが実現できることを期待しています。同じ画面を見ながらであれば、外国語によるコミュニケーションであっても共通認識をもちやすくスムーズに各拠点の状況を把握できるのではと期待しています。
――IPOを実現する上で「数値を語る風土を作りたい」と伺いましたが、もう少し詳しくお聞かせください。
依田:今まではオーナー経営だったため、最終的な意思決定はトップダウンで決めてもらうという場面が多かったのです。その為、メンバー層は業績自体に意識を向けられていないという現状がありました。しかし、その体制では事業存続が難しい。今回のIPO準備を機に、各メンバーが経営陣のビジョンを認識し、全社員が同じ方向を向いて自分達で考えて行動できる組織にしようという動きが始まりました。その中で、「数値を語る文化」を取り入れていくことにしました。数値を語ることで、各メンバーが納得感を持って能動的に行動できるようになると考えたからです。
上場するということはこれまでの内部のステークホルダーだけではなく外部の投資家様をはじめとし、社会から投資をする価値があると認知される企業になる必要があります。つまり、これまで以上に企業価値の向上が求められるのです。その期待に応えるためには、決算の数字をはじめとした経営状況や、その分析に基づく今後のビジョンを早期に開示することが必須だと考えています。
スタッフ層には一人一人が数字に意識を向けてこだわってもらえるよう、積極的に声をかけて「数値を語る文化」の醸成を進めているところです。
まずは短期導入・低コストのmultibookで見える化・決算早期化に向けてスモールスタート
――multibookを知ったきっかけ、採用の決め手について聞かせてください。
依田:以前在籍していた上場企業では、大規模ERPを導入していました。しかし費用がかなりかかる一方で、運用も楽ではありませんでした。IPOのためのコストが諸々発生する中で、大規模なシステムに予算を投下する余裕はありません。海外の現地法人では既に別の会計システムが動いていることもあり、まずは国内外の数値をすべて集約できるサービスがないか検討したところ、会計の顧問先からmultibookを紹介してもらいました。
多言語多通貨対応ができる点、大型ERPパッケージと比較して導入費用やランニングコストがリーズナブルである点、そして当社と似た規模の企業様への導入実績などを拝見し、最終的に採用を決定しました。マネジメントコックピットは、今までExcelベースで行っていた集計作業から解放されるため、業務の効率化はもちろんのこと、情報の可視化、分析・改善施策の具体化など、スピーディーな状況判断にうってつけのサービスと考えています。
最終的には各拠点へmultibookの会計機能導入も検討していきたいと考えていますが、まずは見える化機能を利用して各拠点から本社に仕訳連携を行い、本社ではマネジメントコックピットでリアルタイムに各拠点の状況を把握しながら運用改善をかけていきたいと思います。
――multibookを他社におすすめしていただけるとしたら、どのような会社にフィットしそうだと思われますか。
依田:海外展開を積極的に行っている会社にはおすすめできるのではないでしょうか。また、経理財務部門の体制がまだ整っていない或いは社内にリソースがないという企業にはマネジメントコックピットを利用して少ない負荷で見える化を実現できるといった点でおすすめできます。多言語多通貨の対応ができているサービスでなおかつ導入コストが低くスモールスタートができるため、規模問わずmultibookを活用できるのではないでしょうか。
――今後multibookを利用して実現したいこと、マルチブックに期待することについて教えてください。
依田:IPOに向けてまずは見える化機能で各拠点の会計情報を本社でしっかりと把握し、スピーディーに数値に関するやりとりをしていきたいですね。日本本社としてはマネジメントコックピットをフル活用し数字を共通言語としてコミュニケーションできる体制を作っていきたいです。 更にマネジメントコックピットによる運用がグループ全社でしっかり軌道に乗ったら、全拠点に会計システムとしてmultibookを導入して、本社側でもリアルタイムで各海外拠点の会計情報を把握しながら、内部統制の強化にも役立てていきたいです。
加藤:上場すると正確な連結決算報告を45日以内に開示しなければなりません。しかもその数値は当然正確さが求められます。現状各拠点の個別決算が終わってから連結の数字を出すまでに1ヶ月ほどかかってしまっていますが、普段からマネジメントコックピットを通して日本本社が能動的に各拠点の数字を把握することで、拠点と協力しながら数字の管理精度を上げて、それによって連結決算早期化を実現したいと考えています。
依田:上場までの期間を考えるとかなりタイトなスケジュールではありますが、まずはマネジメントコックピットを活用してIPOに向けた体制構築を行うことが目標なので、引き続き全拠点導入への手厚いサポートをよろしくお願いします。
>海外拠点管理を強力にサポートする『マネジメントコックピット』に関する資料ダウンロードはこちらから。
(取材・文/奥川 隼彦)